おでんの出汁割りの楽しみ方

今回は、おでんの出汁割り(だし割り)の作り方や楽しみ方を紹介する。出汁割りとは日本酒をおでん汁で割った飲み物で、北区赤羽のおでん種専門店である丸健水産が元祖といわれている。

おでんの出汁割りの楽しみ方:丸健水産のおでんと出汁割り

最近は出汁割りが密かなブームのようで、出汁と日本酒のセット商品が発売されたり、出汁割りについてのネット記事が頻出していたりする。

他のサイトでは純粋に出汁割りのみを楽しむための記事が多いが、東京おでんだねではおでんと一緒に味わえる出汁割りの作り方などを紹介したいと思う。

出汁割りの元祖、赤羽の丸健水産

まずは元祖となる北区赤羽の丸健水産の出汁割り(だし割り)について紹介しよう。丸健水産は昭和32年(1957年)創業のおでん種専門店だ。

丸健水産(北区)

当初はおでん種を製造販売するのみだったが、店先のカウンターでおでんを提供するようになり、お客さんのリクエストによりお酒も販売するようになった。初代店主はお酒は扱わない方針だったが、2代目に代替わりしてから提供するようになったという。

東京都北区赤羽:丸健水産のだし割り

出汁割りはある冬の寒い日に、常連客に温まってもらおうとサービスしたことから生まれたそうだ。現在、2代目店主は一番街シルクロードの近くで丸浩(まるこう、北区赤羽1-27-8)というおでん居酒屋を経営しており、そちらでも出汁割りを提供している(参考:NACORD「超人気店からの独立 行列を作らない赤羽『丸浩』の原点回帰」)。

丸健水産(北区): 小山酒造の地酒「丸眞正宗」

丸健水産ではカップ酒を50mlほど残してカウンターに持っていくと、おでん汁を注いで七味唐辛子をかけてくれる(50円の追加料金)。おでん汁の複雑でまろやかな旨味が日本酒と溶け合い、心と身体を温めてくれる。日本酒は丸眞正宗 Maru Cupとワンカップ大関(佳撰)があり、冷酒、常温、熱燗で楽しめるが、お店のおすすめは常温となっている。

丸健水産については「丸健水産の立ち飲みおでん」や「丸健水産のおでん種」の記事でも紹介しているので、あわせてご覧いただければと思う。

出汁割りの作り方

出汁割りは自宅でも簡単に楽しむことができる。ここから、出汁割りの作り方やポイントを紹介していこう。必要なのは日本酒とおでん汁、そして七味唐辛子だけだ。

おでんの出汁割りの楽しみ方:日本酒を50ml残す

日本酒とおでん汁の割合は1:2〜3くらいを基本としながら好みで変えるといい。丸健水産では180mlのカップに対して日本酒50mlを残すことを推奨しているので、厳密に計算すると1:2.6となる。

おでんの出汁割りの楽しみ方:熱燗をつける

日本酒の温度はおでん汁と合わせることを考えると燗酒がいいだろう。おでんの温度は80℃前後だが、日本酒は温度が高いと味のバランスが崩れやすいため、40〜50℃(ぬる燗から上燗、熱燗)あたりで調整するといい。ただし、同じお酒でも温度によって味が変わるので、こちらも自身の好みを見つけてほしい。

日本酒の選び方:燗酒向きで、おでん汁とのバランスがいいもの

日本酒の選び方は、まず「燗酒に適したもの」を探すといい。一般的には純米酒や本醸造酒、普通酒が向いているとされている。冷やしが美味しい吟醸酒や生酒は避けたほうがいいといわれるが、吟醸酒はぬる燗でも美味しいものがあるので一概にはいいきれない。

おでんの出汁割りの楽しみ方:熱燗向けの日本酒各種

次に、おでん汁の邪魔をせず、日本酒の個性も消えないバランスを保てるものを選ぶといい。これは、合わせるおでん汁の風味や味、濃さなどを見極めながら探り当てるしかない。また、おでん汁の割合を変えることでも調整できる。味わう側の好みもあるので、楽しみながらいろいろ試してみるといいだろう。

参考までに、おでん汁とバランスを取りやすいのは醸造アルコールが添加された本醸造酒や普通酒といわれており、主張しすぎず安定感のあるものが多い。一方、個性がしっかり残るのは米の旨味がある純米酒だ。

他サイトのおすすめも紹介しておこう。水産加工品メーカー大手のにんべんは「燗にしたときに酸度がでなさ過ぎないタイプ、旨味がしっかりある純米酒」(参考:にんべん「出汁割りとは?だし汁と日本酒を合わせた飲み物!美味しい作り方をご紹介」)、「久保田」で有名な朝日酒造は「うま味がしっかりある純米酒や、さっぱりとしたあまり個性の強くない本醸造など」(参考:朝日酒造「日本酒と出汁を合わせて飲む『出汁割り』そのベストな組み合わせは?」)をおすすめしている。

本記事を含めてこれらは目安であり、鵜呑みにしすぎないほうがいい。日本酒に造詣が深い人でも意見はさまざまなので、あくまで参考程度に留めておくといいだろう。

おでん汁の選び方:出汁割りにこだわらず、いつもの調合で

おでん汁はいつもおでんを作るときの要領で調合してかまわない。出汁割りばかりに気を取られて、メインのおでんが美味しくできなかったら最悪だからだ。

おでんの出汁割りの楽しみ方:丸健水産のお持ち帰りおでん

昆布と鰹節のスタンダードなものから、鶏や牛すじなどコクのあるもの、砂糖や醤油をきかせた関東風のものなど、おでん汁の特性に合わせて日本酒を変えたほうがいいだろう。ちなみに本記事のおでんは丸健水産で手に入れたが、リクエストすると汁を多めに入れてくれる。昆布や鰹の出汁以外に、揚げ蒲鉾(練り物)や大根などのさまざまな旨味と香りを楽しめる。

七味唐辛子の選び方:風味を変えてあれこれ楽しんでみる

最後に七味唐辛子だが、これも好みのもので問題ない。おでんによく合う柚子や陳皮などの柑橘系の香りを効かせたものや、唐辛子を増やして辛味を強くしたものなど、風味を変えてあれこれ楽しんでみるといい。ただし、七味は意外に主張が激しいので、出汁割りの繊細な味を楽しみたい場合は加えなくてもいい。

日本三大七味:やげん堀、根元 八幡屋礒五郎、七味家本舗

七味はメーカーや商品によって素材や特徴がかなり異なる。たとえば「日本三大七味」である浅草「やげん堀」では通常の唐辛子と焼き唐辛子を加えて辛さに深みを出しており、信州「根元 八幡屋礒五郎」では山椒や生姜、麻種、胡麻、陳皮、紫蘇を加えて辛味と香りの調和をはかっている。京都「七味家本舗」では白胡麻や青のり、青紫蘇など、唐辛子以外はすべて香りを持つ素材を使用し、香りが立つことを重視しているそうだ(参考「七味家本舗:七味三都物語」)。

やげん堀の七味唐辛子(中辛、特別調合)

なお、東京在住であれば、ぜひ「やげん堀」の七味を試してほしい。量販店でも販売しているが、浅草の2店舗では好みに合わせた調合販売を行なっている(追加料金有り)。筆者はこのお店のヘビーユーザーで、粉山椒マシマシをオーダーして店員さんに「バランスが崩れますよ」と度々注意(アドバイス)されている。

出汁割りはお酒でありながらスープでもある。同じスープであっても唐辛子や生姜、黒胡麻を効かせたものでそれぞれ独自の美味しさを放つ。どのテイストをプラスするかは作り手次第、無限大に広がるのだ。

自分で作らなくても手軽に楽しめる「だし割りカップ」

好みでいろいろ組み合わせることが出汁割りの醍醐味ではあるが、手軽に楽しみたい方には日本酒とだし汁が一緒になった「だし割りカップ」がおすすめだ。

三菱食品 だし割りカップ

この商品は三菱食品がトーヨービバレッジと共同開発し、2020年12月から発売開始、昨年11月にリニューアルした。三菱商事系列ということもありローソンを中心に販売している。アルコール度数は3%と低めだが、しっかり日本酒の味を楽しめる。上面をすこし開けて、電子レンジで温めるだけでできあがる。

三菱食品 だし割りカップ

「ヤマキの鰹だしとかつおぶしエキスを使用している」だけあり、鰹の風味がストレートに出ており雑味がまったくない。おでん汁のような複雑でまろやかな味とは一線を画す仕上がりとなっている。SNSでは概ね好評のようだ。

出汁割りはもちろん、おでんと一緒に楽しめる日本酒たち

さて、ここからは筆者が選んだ日本酒を紹介しよう。出汁割りはもちろん、おでんと一緒に楽しめる燗酒向きの銘柄を選んでいる。また、東京おでんだねらしく東京近郊の造り酒屋で、手に入りやすいものばかりだ。

小山酒造(小山本家酒造) 丸眞正宗 Maru Cup

まずは、丸健水産で販売している小山酒造の「丸眞正宗 Maru Cup」。小山酒造は北区赤羽(岩渕)で明治11年(1878年)に創業した造り酒屋だったが、平成30年(2018年)に廃業した。現在は遠縁の小山本家酒造が継承している。

小山酒造 丸眞正宗 Maru Cup(小山本家酒造)

「丸眞正宗 Maru Cup」はすっきりとした辛口ながら米の旨味も味わえるバランスのよいカップ酒で、王子の平澤かまぼこ 王子駅前店でも扱っている。普通酒らしくおでん汁を邪魔せず飲みやすいが、辛さがしっかり立っていて個性も感じられる。日本酒度は+3、酸度は1.3となる。

小山酒造 丸眞正宗 純米吟醸(小山本家酒造)

丸眞正宗 Maru Cupは丸健水産近くの「リカースタジオ清水屋」(東京都北区赤羽1-42-11)や赤羽周辺の酒屋で購入することができる。純米吟醸もあり、こちらも癖が少なく食中酒として最適な万能タイプだ。ぬる燗にも適しているので出汁割りとしても相性がよく、Maru Cupよりもまろやかな味わいとなる。

大関 上撰 金冠 ワンカップ

丸眞正宗 Maru Cupと同じ普通酒で、カップ酒の元祖のワンカップ大関も出汁割りによく合う。

大関 上撰 金冠 ワンカップ

ワンカップは冷やや常温だと「甘すぎる」と評されることが多いが、出汁割りにするとふっくらとしたやさしい甘味がおでん汁と見事に調和し、初心者には最適の1本だ。実は、現在の丸眞正宗 Maru Cupには糖類や酸味料が加えられているが、ワンカップは小山酒造時代のMaru Cupと同じく米と米麹、醸造アルコールのみを使用している。日本酒度は0、酸度は1.4となる。

ワンカップ大関はデザインも素晴らしい。日本の工業デザインの草分けである小池岩太郎氏、東京女子美術大学の松川烝二氏が中心となって手がけており、機能性も高く、先進的でありながら普遍性を持っている。

神亀酒造 神亀 純米清酒

神亀酒造は埼玉県蓮田市にあり、最初に全量純米酒にしたことで有名な造り酒屋だ。「神亀 純米清酒」は神亀を代表する銘柄であり、熟成された旨味がありながら、しっかりとしたキレもあるバランスの取れたお酒だ。

神亀酒造 神亀 純米清酒

燗酒に最適で、純米酒ならではの米の芳香が素晴らしい。出汁割りにすると個性がやわらぎ、おでん汁と見事に調和する。それでも普通酒より個性が強めなので、温度や割合などを変えて楽しむといいだろう。日本酒度と酸度は非公開となっている。

神亀酒造 神亀 「真穂人」純米酒、純米清酒、武蔵神亀 亀の尾 純米酒

神亀はほかにも燗酒に適した純米酒を数多く揃えている。どれもおでんに合わせると最高に美味い。葛飾区京成立石の丸忠かまぼこ店でも取り扱っている「真穂人」は、純米清酒より旨味が深いため出汁割りにするとおでん汁に勝ってしまうが、乗りこなしていく面白さがある。

小澤酒造 澤乃井 純米大辛口

最後は「澤乃井」で知られる小澤酒造の純米大辛口だ。食中酒の大定番で、量販店や居酒屋でも頻繁に見かけるオールラウンダーだ。

小澤酒造 澤乃井 純米大辛口

日本酒度は+10、酸度は1.8と、名前のとおり数値は超辛口。しかし、実際に口にするとバランスが取れていて飲みやすい。出汁割りでもキレのある口当たりが心地良いが、個性が出過ぎる場合はおでん汁の割合を多くするといいだろう。

東京都青梅市沢井:小澤酒造のある奥多摩
小澤酒造のある奥多摩(東京都青梅市沢井)

余談だが、小澤酒造が経営する澤乃井園ではお酒と一緒に軽食のおでんを味わえる。多摩川の美しい自然に囲まれながら楽しむ日本酒とおでんは最高なので、機会があればぜひ足を運んでいただきたい。

おでんの出汁割りの楽しみ方:丸健水産のおでんと出汁割り

いろいろと説明してきたが、出汁割りは立ち飲みおでんで生まれた庶民的な飲み物なので、あまり気取らず、気張らずに楽しむのがいちばんだと思う。まだまだ寒い日が続くので、あたたかいおでんと一緒に味わってみてはいかがだろうか。

丸健水産の基本情報

丸健水産
〒115-0045 東京都北区赤羽1-22−8
03-3901-6676
定休日:水曜日
営業時間:10:30〜19:00
丸健水産のWebサイト

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