東京おでんの調理方法

東京のおでん種専門店に行くと、店主たちからおでんの作り方のアドバイスを受けることがある。今回は、彼らおすすめの東京おでんの調理方法を紹介しよう。おでん種は、板橋区中板橋にある太洋かまぼこ店のものを使用した。

美味しいおでんを作るポイント

おでんの調理方法は、地方やお店、家庭によって千差万別だ。それぞれにこだわりがあり、それぞれ異なる魅力がある。

東京おでんの調理方法

東京のおでんでも作り方は多種多様だが、作り方には共通するポイントがある。それは、

1.煮えにくいものは下茹でしておくこと
2.煮えにくいものから煮ていくこと
3.煮立てず弱火でじっくり煮込むこと
4.練り物を長く煮ないこと

この4点を守れば、必ず美味しいおでんができあがる。家庭独自の秘伝の作り方を持たない方は、ぜひ参考にしてほしい。

ステップ1:おでん種やさんでおでん種を購入

まずは食材の購入。近所に行きつけのおでん種やさんがあるならば、ぜひそこで買うといい。自宅の近くにない場合は、東京おでんだねのサイトで興味のあるお店を探してもいいだろう。右上の検索で最寄りの市区名で検索できるし、右側のカテゴリメニュー(モバイル版は一番下)からも市区別に調べられる。

太洋かまぼこ店(板橋区 中板橋)

筆者は今回、中板橋にある太洋かまぼこ店でおでん種を購入した。太洋かまぼこ店の店主は現在3代目の若い方だ。安全で美味しい材料を厳選し、お客さんに対して情報開示をきちんと行うなど、おでんに対する情熱が素晴らしい。詳細は太洋かまぼこ店の記事をご覧いただきたい。

太洋かまぼこ店(板橋区 中板橋)

梅雨なので店頭には商品札しかなかったが、揚げ蒲鉾で10種類ほど揃っていた。夏期はお休みしているお店もあるので、不安な方は事前に電話で確認してみるといい。

大根や玉子など、揚げ蒲鉾以外のおでん種は商店街のお店で揃えるといいだろう。スーパーでまとめて買うのもいいが、各店をまわって食材を集めると、お店の人たちとのやりとりがあってなかなか楽しい。

ステップ2:食材の下ごしらえ&下ゆで作業

食材を購入したら、次は下ごしらえを開始。主に煮えにくいもの、大根、玉子、ちくわぶ、白滝、こんにゃくなどが対象だ。

大根の下ごしらえ

大根は真ん中の部位を中心に、3〜4センチほどの厚みで輪切りにする。皮は3〜5ミリくらいの厚みでかつらむきし、角は煮崩れ防止のために面取りをする。最後に隠し包丁として十字に切り込みを入れておく。

おでんのシミシミ大根の作り方:大根に隠し包丁を入れる

次に下ゆでだ。鍋に大根と水を入れ、米の研ぎ汁か米をひとつまみほど加える。最初は中火にして、沸騰したら弱火に変えて15〜20分ほど茹でる。アクを丁寧にとり、竹串を刺してすっと通るようになったら大根を取り出し、さっと水洗いしておく。詳しくは「おでんのしみしみ大根の作り方」記事をご覧いただきたい。

玉子の下ごしらえ

玉子はゆで卵にする。スタンダードなのは固茹でだが、好みに応じて半熟にもできる。玉子を冷蔵庫から取り出し、しばらく放置して常温に戻したら、おたまなどで沸騰したお湯にやさしく投入する。黄身が片寄らないように菜箸でくるくると回し、10分ほど茹でる。

東京おでんの調理方法:沸騰したお湯で玉子を茹でる

玉子を氷水に移して10分ほど放置したら、流水にさらしながら皮を剥いて完成。詳しくは「おでんの玉子・半熟玉子の作り方」記事を参照のこと。

ちくわぶの下ごしらえ

ちくわぶは斜めに包丁を入れ、電子レンジで下ゆでする。耐熱容器にちくわぶがひたひたになるくらいに水を入れ、5分ほど加熱すればいい。

東京おでんの調理方法:電子レンジを使った下ゆで

茹でる場合は鍋底にくっつかないようにアルミざるか出汁用の昆布を敷くと焦げ付かない。詳しくは「おでんのちくわぶの調理方法」記事を見ていただきたい。

白滝の下ごしらえ

白滝は結んでから、熱湯で数分茹でてアク抜きするだけでOK。すでに結んである商品もあるので、ほとんど時間はかからない。

おでんの白滝の結び方・巻き方:

結び方は「おでんの白滝の結び方・巻き方」記事にさまざまなバリエーションが記載されているので、ぜひチャレンジしてほしい。

こんにゃくの下ごしらえ

こんにゃくはフォークや包丁で隠し包丁を入れ、塩もみや熱湯を茹でてアク抜きする。面倒な場合は、こんにゃくに熱湯をかけるだけでも臭みは取れる。

おでんのこんにゃくの下ごしらえ方法:フォークを利用

こちらも詳しくは「おでんのこんにゃくの下ごしらえ方法」を参考にしていただきたい。

結び昆布の下ごしらえ

結び昆布は市販のものをそのまま利用してもいいが、自分で結んでみるのも面白い。水に戻したり、塩抜きなどの工程を経なければならないので手間はかかるが、市販のものとは異なった味わいの美味しい結び昆布ができあがる。

おでんの結び昆布の結び方:結び目を作る

乾燥昆布も美味しいが、三陸海岸の塩蔵昆布は肉厚でありながらわかめのように柔らかく、新鮮味があって味と香りが素晴らしい。「おでんの昆布の結び方」で詳しく解説している。

揚げ蒲鉾の下ごしらえ

揚げ蒲鉾は余分な油がおでん鍋に移らないように、油抜きをしておく。熱湯を沸かして、ざるに入れた揚げ蒲鉾に注げば完了だ。

東京おでんの調理方法:揚げ蒲鉾の油抜き

おでん種やさんによっては油抜きしなくても大丈夫なお店もあるので、油浮きが気になる場合は行っておこう。

ステップ3:おでん汁の用意

おでん汁はおでんにとって欠かせない重要なものだが、出汁からきちんと作るのはかなり時間がかかる。家庭の日常使いなら顆粒や濃縮されたおでん汁の素を使うといいだろう。さらに、ひと手間加えるだけでじゅうぶん美味しくなる。

チヨダ「おでんの味」と正田醤油「おでん汁」

東京のおでん種専門店ではチヨダの「おでんの味」と正田醤油の「おでん汁」が二大巨塔だ。どちらも溶くだけで手軽におでん汁ができあがり、保存も効きやすい。

李錦記のオイスターソース

さらに、オイスターソースを加えるとうまみとコクが出る。鍋に大さじ1杯くらいでじゅうぶんだ。詳しくは「手軽に利用できるおでん汁の素」の記事をご覧いただきたい。

おでん汁は薄めにしておいて、完成間際に濃さを調整するといい。最初に味を決めてしまうとおでん種の塩気などで味が濃くなり、薄めるのが難しいからだ。

ステップ4:おでん種を投入する順序と煮る時間

おでん種とおでん汁の準備が整ったら、いよいよそれらをひとつの鍋で煮ていく。煮えにくいものから先に煮ていくのがポイントだ。
また、煮えにくいものは出汁を吸うものが多い。先に煮るのは柔らかくする目的もあるが、味を染み混ませるという意味もある。逆に、揚げ蒲鉾などの練り物はうまみが逃げないように後から入れる。

東京おでんの調理方法:煮る工程

紀文の「おでんのおいしい作り方」によると、おでん汁を煮立ててから下記のような順序で投入していく。

弱火で0〜30分の間に投入する順序(30分)

大根、玉子、牛すじ、こんにゃく、白滝、ちくわぶ、結び昆布

弱火で30〜45分の間に投入する順序(15分)

餅入り巾着、ちくわ、さつま揚、つみれ、ウインナー、厚揚げ

火を止める直前で入れるもの

はんぺん

火にかけてから30分までのおでん種は、味を吸うものが大半を占める。その後15分は味が逃げるものばかりだ。はんぺんは火を止める直前、もしくは止めてから入れることをおすすめする。

ちなみに、おでん種専門店がおすすめする順序も、ほぼこの流れと同じだ。

東京おでんの調理方法

さて、完成したおでんがこちら。バラエティ豊かで、見ているだけでワクワクしてくる。太洋かまぼこ店のすり身は塩の分量は少なめだが、魚のうまみがしっかりしているので、おでん汁は薄めがいいだろう。

なお、火を止めて何時間か休ませると味が染みるので、時間に余裕があれば午前中に作っておくといい。

太洋かまぼこ店のおでん種

さて、今回使用した太洋かまぼこ店のおでん種をすこし紹介しよう。

太洋かまぼこ店(板橋区 中板橋)のおでん種

時計回りに12時から、もやし揚げ、しゅうまい巻、ぎょうざ巻き、やさいボール、ごぼう巻き、げそ巻き、さつま揚げ、やさい揚げ、魚すじ(中央)。このほかにしょうが揚げとちくわぶも購入。

太洋かまぼこ店(板橋区 中板橋)のおでん種 さつま揚げ

さつま揚げは具材が入っていないぶん、すり身の美味しさをじゅうぶんに堪能できる。手頃な大きさで食べやすい。太洋かまぼこ店のすり身は密度が高く、なめらかな舌触りが特徴だ。

太洋かまぼこ店(板橋区 中板橋)のおでん種 しょうが揚げ

しょうが揚げは紅生姜の色が美しい定番のおでん種だ。さっぱりとした爽やかな香りが心地よく、魚のすり身の味を引き立てている。

太洋かまぼこ店(板橋区 中板橋)のおでん種 ごぼう巻き

ごぼう巻きも定番のおでん種だ。ゴボウはしっかりアク抜きしてあり、丁寧な下ごしらえが滋味深い味わいを一層深めてくれる。

太洋かまぼこ店(板橋区 中板橋)のおでん種 もやし揚げ

もやし揚げは他の揚げ蒲鉾よりも大きめだが、もやしのシャキシャキ感を残すための工夫なのだという。黒ごまの芳香と味わいがよいアクセントとなっている。

太洋かまぼこ店(板橋区 中板橋)のおでん種 ぎょうざ巻き

ぎょうざ巻きは30年以上付き合いのある専門店から仕入れている餃子を使用しているそうだ。具材を多めにしてあり、餡の挽肉のうまみがジュワッと口の中に広がる。

太洋かまぼこ店(板橋区 中板橋)のおでん種 やさいボール

やさいボールは玉ねぎのみじん切りが入っていて、魚のすり身の味がやさしくまろやかになっている。ついつい何個もたいらげてしまいそうだ。

太洋かまぼこ店(板橋区 中板橋)のおでん種 げそ巻き

スルメイカのゲソを使ったげそ巻きは、噛めば噛むほど味が広がるが、柔らかいので食べやすい。特徴的な形状も魅力のおでん種だ。

太洋かまぼこ店(板橋区 中板橋)のおでん種 やさい揚げ

やさい揚げは玉ねぎとあおさ海苔を混ぜ合わせたおでん種。太洋かまぼこ店で古くから揃えている伝統の品だ。海苔の香りと玉ねぎの甘さのコラボレーションが素晴らしい。

太洋かまぼこ店(板橋区 中板橋)のおでん種 しゅうまい巻き

しゅうまい巻は俵型のすり身のなかに焼売が入っている。つるっとした焼売の皮の食感が心地よく、肉汁もたっぷりあふれ出てとても美味しい。

太洋かまぼこ店(板橋区 中板橋)のおでん種 魚すじ

魚すじはヨシキリザメのすじと軟骨、アオザメの身を使った手作りのもの。大手市販のものだとヨシキリザメとスケソウダラのすり身を混ぜたものが多いが、太洋かまぼこ店は昔ながらの原料にこだわっている。コリコリとした軟骨の食感が素晴らしい。

おでんは弱火でじっくり煮る

おでんは下ごしらえ以外は煮るだけなのでとても簡単だ。しかし、火加減だけは気をつけたい。テレビなどではぐつぐつ煮えたぎったものや蓋を開けると湯気が立ちこめる演出が多いが、実際は弱火でじっくり煮たほうが煮崩れせずに美味しく仕上がる。
太洋かまぼこ店のように丹精込めた品質の高いおでん種を調理する場合は、なおさら丁寧に行いたい。先述した4つのポイントを踏まえて、美味しいおでんを完成させてほしい。

太洋かまぼこ店の基本情報

太洋かまぼこ店
〒173-0016 東京都板橋区中板橋15-14
03-3962-5473
定休日:日曜日
営業時間:10:30~19:00すぎ
太洋かまぼこ店のウェブサイト
太洋かまぼこ店のFacebook

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