2018年10月から始めた東京おでんだねの活動は、このたび3周年を迎えることができた。毎年の恒例となるが、今年1年を振り返ってみたいと思う。
東京おでんだねが活動を続けてこれたのは、東京のおでん種専門店を経営する店主たちと読者の方々、そして筆者のパートナーのおかげだ。活動当初からあたたかく見守っていただき、本当に勇気づけられている。
3年目の記事の傾向
今年1年の記事を振り返ると、前半は本業が忙しく(東京おでんだねは趣味の活動のため)、シリーズ化しやすい記事や過去に取材した情報を再構成したものが多かった。一方で、後半は時間と労力を注いだハイカロリーな記事が多かった。また、より多くの方に興味を持ってもらえるように、東京のおでん種専門店以外の記事を増やしていった。
例えば、おでんを調理販売しているお持ち帰り専門店の紹介記事(目黒食品、味自慢のやまや、ねぎし丸昇、大竹商店)だ。揚げ蒲鉾などのおでん種は製造せず、仕入れて調理するようなお店だ。駄菓子屋のおでんもこのジャンルに含めているが、都内ではほとんど見かけることがなくなった。
お店ごとに多くの魅力があるにもかかわらず、近年減少傾向にあるため、重点的に訪問して記事にしていった。
おでんそばやうどんにも注目し、14、5軒訪れて記事にした。多くのメディアで「ありそうで、ない」と紹介されることが多いが、実際に調査してみると多数存在し、「なさそうで、ある」ことが判明した。高級・こだわり志向のお蕎麦屋さんは人気だが、おでんそばやうどんを提供している昔ながらのお店は店主の高齢化が進み、減少傾向にある。
お持ち帰り専門店も街のお蕎麦屋さんも、おでん種専門店に通ずる魅力があるため、これらのジャンルに興味のある方はおでん種専門店にも関心を示してくれると思い記事にしてみた。今後もおでんや揚げ蒲鉾に関するネタがあれば、積極的に取り上げていきたいと思っている。
調理方法の記事は東京という地域に限定されないため、より広い層に興味を持ってもらえる。例えば、白滝やこんにゃくの下ごしらえの記事は公開から2年以上経つが依然アクセス数が多い。このため、がんもどき(飛龍頭)や鰯つみれなどの調理方法の記事にも力を注いだ。
これらの調理方法はネットに嫌というほど存在するが「なぜそのように下ごしらえをするのか」という根拠が曖昧なものが多い。このため「おでんのタコ、柔らかくする方法と色移りの対策」記事のように、納得するまで自分なりに調理を繰り返した。プロの料理家ではないため稚拙な部分も多いが、調理の際の一助となれば幸いだ。
メディア取材とおでん種専門店のあたたかみ
メディアからの取材や出演は3件あった。テレビ東京「たけしのニッポンのミカタ!」では各おでん種専門店をロケ取材し、紹介と食レポまで担当した。日本テレビ「ZIP!」ではリモート参加で5秒程度、雑誌では徳間書店の「食楽(しょくらく)2021年秋号」でインタビューを受けたり、特集づくりのために当サイトを利用していただいた。
実現に至らなかったり、今後放映されるTV番組などを含めるとかなりの依頼があった。また、東京おでんだねが参加していないTV番組などでも、当サイトを参考にしていると思わしきものが多々あった。「東京のおでん種専門店の魅力を伝える」ことに貢献できたようで、非常に嬉しく思った。
メディアに取り上げられるとおでん種専門店に新規のお客さんが殺到し、地元の常連客に迷惑がかかるため取材協力に難色を示すお店が多い。しかし、「東京おでんだねさんの頼みなら受けてもいいよ」とおっしゃていただいたお店が数多くあった。
筆者は個々のお店だけでなく、東京のおでん種専門店全体の魅力が伝わるのであればTVなどのメディアに取り上げてもらうこともひとつの手段だと思っている。その場合は各店の迷惑にならないかいつも迷うのだが、筆者の思いを汲み取って、このようなお言葉を投げかけていただくと涙が出るほど嬉しく感じる。また、たとえお断りいただく場合でも、こちらが無理を言っているにもかかわらず「本当にごめんね」と丁寧に返答していただき、申し訳なく感じると同時に非常に嬉しく思う。
これは3年の間に培った筆者とお店との信頼関係も当然あるが、各店の「人を思いやる気持ち」が所以であると思っている。本当にあたたかく、素晴らしい方々との出会いに恵まれ、それが人生の宝物になっている。
おでん種やさんの思い出を、豊かに包み込むような記事を
4年目となる2022年も引き続き粛々と東京のおでん種専門店の魅力を伝えるべく記事を更新していきたいと思っている。サイトの流入施策としてはより広い層にアプローチできる記事を引き続き作成し、おでん種専門店の魅力を伝える記事では味だけでなく、店主たちの思いや心意気を伝えられるような取材ができればと思っている。
今年9月30日には荏原中延の名店、丸佐かまぼこ店が閉業した。より濃密な取材ができる機会に恵まれて、店主のお話をたくさん伺うことができた。2021年現在、東京のおでん種専門店は大手を除いて46軒ほどが営業を続けているが、各店ごとのドラマや思いを記録に残す意義をあらためて感じている。
これらの記事を誰に届けたいかといえば、おでん種専門店の魅力を知らない人たちはもちろん、長く親しんできた人々に向けても発信していきたい。たとえば、先日サイトのアクセス解析をしているとき、itakura26さんという方の「忘れられないおでん屋さん」というブログ記事を見つけた。この方は中野区のますだや(閉業、中野区新井1-31-4)のおでん種を食べて育ったが、お店が閉業してからしばらく経って検索すると、まったくお店の情報にたどり着けなかったという。しかし、東京おでんだねの「増田屋の系譜」の系譜図に「中野」の文字を見つけて、胸が熱くなったそうだ。
itakura26さんがブログで記されているとおり、ますだやの閉業後に東京おでんだねは活動を開始したので(ますだやの閉業は2009年頃、東京おでんだねの活動開始は2018年)、詳細な記事を提供できていない。閉業後でも営業当時の雰囲気を豊かに振り返ることができるような記事を書きたいと常々思ってきたが、活動当初からいささかスタートが遅すぎたと後悔し続けている。今回、itakura26さんの記事を見てそれを痛感した。しかし、時は遡れないので、今後も全力で活動を続けていきたいと思っている。
毎週の更新は正直大変だと思うときもあるが、当初のとおり「東京のおでん種専門店の魅力を伝え、多くの人に足を運んでもらう」「おでん種やさんでおでんを買って、家で調理して食べる文化を盛り上げる」ことを目的としてこれからも取材に励んでいきたいと思っている。
4年目も引き続き、応援のほどよろしくお願いいたします。