いろいろな形のおでん種(揚げ蒲鉾)

今回は木型で成形した面白い形のおでん種(揚げ蒲鉾)を紹介していこう。

いろいろな形おでん種(揚げ蒲鉾)

揚げ蒲鉾を成形する木型にはさまざまな種類があり、四角や三角といった図形的なものから、扇や木の葉、魚(鯛)やイカなどの形もある。おでん種専門店によって個性はさまざまなので、お店をめぐってみると面白い。

木型でつくられる、さまざまな形の揚げ蒲鉾

蒲鉾は手のひらや「つけ包丁」という刃のない蒲鉾専用の包丁、「せっかい」と呼ばれる木のへらを使って成形する。同じ形のものや細かな形のものをつくる際には木型が用いられる。

せっかいですり身を適量取り、木型に詰めていく。蒲鉾職人の仕事を見ていると簡単そうに思えるが、手早く均一な形にするには長年培った技術が必要となる。木型は古くから職人が手づくりしていたが、近年では少なくなりつつあるという。

四角や三角の揚げ蒲鉾

まずは基本の形となる四角や三角のものを見ていこう。比較的多くのお店で見られるのが、四角や三角といった幾何学模様の形だ。

美好商店の黄金揚げ、太洋かまぼこ店の春菊とにんじん、八幡屋のお好み揚、丸佐かまぼこ店(堀ノ内)の枝豆入り
美好商店の黄金揚げ、太洋かまぼこ店の春菊とにんじん、八幡屋のお好み揚、丸佐かまぼこ店(堀ノ内)の枝豆入り

四角でも長方形や正方形、小さなものから大きなものまである。並べやすく、美しく盛り付けもできる。木型の成形は厚みを均一にできるので、食感も整えやすい。

千葉県野田市:蒲鉾の八木橋のさつま揚げ
千葉県野田市:蒲鉾の八木橋のさつま揚げ

具材が入っていないさつま揚げが多いが、お店によって個性ある具材を加えているところもある。

木の葉型の揚げ蒲鉾

幾何学模様に次いで多い存在するのが木の葉型の揚げ蒲鉾だ。可愛らしくも情緒のある形状が食卓を華やかにしてくれる。

美好商店(江東区 三好) おでん種:木の葉揚げ
美好商店江東区 三好) おでん種:木の葉揚げ

一見同じ形のようだが、よく観察するとかなり異なっていることがわかる。大量生産の工業製品ではなく、職人の手づくりの木型だからだろうか。

九州屋蒲鉾店の野菜揚げ(ごぼう)、栄屋蒲鉾店のごぼう天、八幡屋のしょうが天、蒲元の生姜揚
九州屋蒲鉾店の野菜揚げ(ごぼう)、栄屋蒲鉾店のごぼう天、八幡屋のしょうが天、蒲元の生姜揚

生姜や桜海老が入っているものが多く、おそらくは紅葉をイメージしたものなのだろう。こういった細やかな情緒に触れると心が豊かになった気がする。

扇形の揚げ蒲鉾

扇形の揚げ蒲鉾も多く存在する。末広がりの形は縁起がよく、晴れの席で食される蒲鉾にぴったりだ。

増英蒲鉾店の生姜天、蒲吉商店の末広揚、蒲眞のショウガ天、増田屋蒲鉾店(堀切)のしょうが揚
増英蒲鉾店の生姜天、蒲吉商店の末広揚、蒲眞のショウガ天、増田屋蒲鉾店(堀切)のしょうが揚

扇形の揚げ蒲鉾も生姜を具材にしたものが多い。紅白の縁起の良さが扇の形に通じるからだろうか。ネギなどの野菜を加えて緑が入ると、よりその美しさが際立つようだ。

魚(鯛)型の揚げ蒲鉾

縁起の良いモチーフといえば鯛がある。蒲鉾は魚のすり身が原料であるし、相性はぴったりだ。

神奈川県横浜市港北区菊名:八州屋かまぼこ店のえび天
八州屋かまぼこ店のえび天

神奈川県の妙蓮寺駅にある八州屋かまぼこ店のえび天は、目やえら、ひれまであるこだわりの造形だ。食べるのが惜しくなるほど可愛らしく、おでん以外に利用しても映えるだろう。

マルイシ増英(足立区 北千住)おでん種:えび天
マルイシ増英のえび天

マルイシ増英のえび天も可愛らしい形をしている。同じえび天ながら、八州屋と比べると形がまったく異なることがわかる。過去には現在よりも多くの木型が存在したのだろう。

梅型の揚げ蒲鉾

木型は縁起の良いモチーフが多く、梅型のおでん種も存在する。こちらも紅生姜が具材となっている。

大国屋(墨田区 京島) おでん種:紅生姜揚
大国屋(京島)の紅生姜揚

梅なので紅色が美しく映える。春の訪れを祝うように2月の立春あたりにおでんに入れると季節感を演出できるかもしれない。

イカ型の揚げ蒲鉾

これまで紹介してきた木の葉、扇、魚(鯛)、梅は比較的メジャーなモチーフではあるが、埼玉県の与野駅にある増田ヤ(与野)にはイカ型の揚げ蒲鉾が存在する。

増田ヤ(与野)のいか天
増田ヤ(与野)のいか天

イカがすり身の端までたっぷり入った満足感のあるおでん種なのだが、まずその形に目を奪われる。イカの耳(エンペラ)の形もしっかりしていて、誰がどう見てもイカそのものだ。こういった遊び心がより食事を楽しくさせる。

ハート(猫)型の揚げ蒲鉾

ハートのようにも見えるし、猫の顔のようにも見える。どちらにしても可愛らしくて微笑ましいのが増田屋蒲鉾店(京成小岩)のしょうが入りだ。

増田屋蒲鉾店(京成小岩)のしょうが入り
増田屋蒲鉾店(京成小岩)のしょうが入り

下に向かうに従って、垂直から湾曲していくラインは猫の顎のようにも見える。しかし上中央の切れ込みはハートのようにも見える。この形の正体を知りたければ、ぜひお店まで足を運んでみてほしい。

スカイツリー型の揚げ蒲鉾

最後は超現代的なモチーフの揚げ蒲鉾を紹介しよう。墨田区京島にある大国屋(京島)は墨田区を代表する東京スカイツリーをモチーフにしたおでん種を販売している。

大国屋(墨田区 京島) おでん種:スカイツリー
大国屋(京島)のスカイツリー

形の面白さもさることながら、国産の青海苔がたくさん練り込まれており、磯の香りが口の中に広がって味も格別だ。日本を代表するタワーに日本人が大好きな海苔という組み合わせは秀逸だ。

おでん種専門店をめぐってみると、さまざまな形をしたおでん種に出会うことができる。これだけいろいろな形に出会えるのは手づくりのお店ならではの魅力だ。紹介したなかにはすでに閉業したお店もあるので、より多くの個性あるおでん種を探しに休日などを利用して出かけてみるといいだろう。

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