今回は焼売巻(しゅうまい巻、シュウマイ巻)とおでんの焼売について紹介しよう。意外な組み合わせと思われるが、おでんと焼売は相性がよい。
おでん種専門店を利用する方であれば、焼売巻を知っている方は多いと思う。しかし、スーパーなどの量販店では見かけることは少ないため、どのようなものか想像できない方も多いのではないだろうか。
今回は東京のおでん種専門店で取り扱っている焼売巻とともに、おでんにそのまま入れて楽しむ焼売について紹介していきたいと思う。
焼売と焼売巻
焼売は中国の食べ物であると同時に、日本人にとっても馴染み深い存在だ。焼売は14世紀の文献に登場したのが最古とされ、中国北部から南部まで幅広く親しまれてきた。
具材は豚肉だけでなく、羊肉や牛肉、エビなどさまざまで、皮も小麦粉のほか米粉なども用いられる。日本では「シュウマイ」と発音するが、これは広東語が由来であり、北京語(普通語)では「シャオマイ」となる。
日本では明治32年(1899年)に横浜の博雅亭が販売をはじめたとされ、崎陽軒の「シウマイ弁当」などによって知名度が上がり普及していった。昭和のはじめには一般家庭でも親しまれており、昭和30年代には給食の献立に並ぶようになった。グリーンピースを乗せるのはショートケーキの苺に見立て、彩りを加えたことがはじまりといわれている。
一方、焼売巻(しゅうまい巻、シュウマイ巻)は焼売を魚のすり身で包んで揚げたもので、おでん種として用いられることが多い。
起源は定かではないが、足立区梅田(足立区梅田1-28-10)にあった「蒲一」というおでん種メーカーが生み出したという説がある。蒲一は川口市に移転したあとに関連会社の割烹かまいちに統合されたが、Webサイトで「元祖しゅうまい巻」と謳っている。
また、いつ頃生まれたかも判然としないが、筆者の幼少時代である昭和50年代(1975年〜)にはすでに存在していた。また、荒川区にある大阪屋のFacebookには以下のように記されている。
子供の頃、矢崎稲荷神社の横に来ていた屋台のおでん屋さんで、よく買い食いをしておりましたが、このシュウマイ巻は高くて手が出せなかった記憶があります。
確か昭和54年ごろで80円位だったかなぁ。
そして食べたときのうまさが当時の私にとっては衝撃的だったこともあり、今でも私にとっては高嶺の花のおでん種になっております。
大阪屋の古い写真にも焼売巻の名札が写っていた。昭和40年代頃に撮影したものなので、その頃にはすでに存在したことになる。
さまざまなバリエーションが面白い、焼売巻
焼売巻はお店によって形状が異なり、比べてみると面白い。大きく分けて4パターンある。
まずは焼売の上面が見えているパターン。この形状が最も多く、佃忠の各店舗(亀有、向島、田端、池袋)や北千住のマルイシ増英、八王子の小田原屋などが採用している。
東新小岩にある桧山水産のしゅうまい巻は焼売の皮の四辺が練り物から出ており上品で可愛らしい。焼売巻はお店のこだわりがそれぞれ異なり、非常に興味深い。
最近はあまり見かけなくなったグリーンピースがのったものもある。緑が彩りよく、食べるのがもったいなく感じる。京成小岩の増田屋蒲鉾店と小台の大阪屋、深川の美好商店で購入できる。
すり身で焼売を完全に覆ったものも多い。吉祥寺の塚田水産、麻布十番の福島屋、神谷の平澤蒲鉾店などがこのパターンだ。
餃子巻のように棒状や俵型のものもある。中板橋の太洋かまぼこ店、足立区綾瀬の増田屋かまぼこ店、荏原中延の蒲眞などが採用している。
これらはすり身の厚さも異なり、大きさも違うので、食べ比べして違いを味わってみても面白いだろう。
おでん種としてそのまま焼売を楽しむ
焼売巻だけでなく、焼売をそのままおでんに入れる家庭もある。最近はワンタンのように焼売をスープに入れた「水焼売」が話題になっているようだが、おでんにしても美味しい。
焼売は豚肉、エビ、ホタテなどさまざまな種類があるため、好みのものを選ぶ楽しみがある。前日の残りを使ってもいいし、冷凍のものを使用してもいいだろう。
作り方は非常に簡単だ。おでんの鍋に投入し、弱火で数分煮ればすぐに食べられる。鍋にずっと入れていると崩れてしまうので、中まで火が通ったら取り皿に移すといい。また、汁に浸かっていない皮の部分は固くなるので時折汁をまわしかけてあげよう。
小籠包のように千切りの生姜をのせて食べるとよいアクセントとなる。おでん汁がほどよく絡み、普通の食べ方よりもまろやかな味わいを楽しめる。
焼売巻はおでん汁で10分から15分ほど弱火で煮れば完成だ。強火にしたり、長い時間煮込んだりするとすり身が膨らんでしまうことがあるので馴染ませる程度でじゅうぶん美味しくなる。
焼売巻やおでんの焼売を食べたことのない方はこの記事をきっかけとして、ぜひ一度味わってみてもらいたい。意外にも相性がよく、焼売好きならば病みつきになることは間違いない。