暴太郎戦隊ドンブラザーズのおでんを楽しむ

今回は「暴太郎戦隊ドンブラザーズ」に登場するおでんの紹介に加え、さらに美味しく味わえる方法などを解説していきたいと思う。

暴太郎戦隊ドンブラザーズのおでんを楽しむ

「暴太郎戦隊ドンブラザーズ」をご存じだろうか。暴太郎戦隊ドンブラザーズ(以下、ドンブラザーズ)は東映のスーパー戦隊シリーズの特撮作品で、令和4年(2022年)3月6日からテレビ朝日系列で毎週日曜午前9時半から放送している。

この作品はおでんとの関わりが深いと話題になっており、筆者はTwitterでドンブラザーズのファンの方から教えていただいた。視聴してみると、現時点までに放映された40話中8話におでんが登場し、物語のキーアイテムになっている。また、ドンブラザーズはほかのスーパー戦隊に比べて奇想天外な展開が多く、おでんも少々滑稽に描かれている。

今回はおでんが登場するシーンを1話ごとに紹介し、より美味しい味わい方、楽しみ方などを紹介できればと思う。なお、この記事にはネタバレが含まれるので、未視聴の方はご注意いただきたい。

ドンブラザーズの概要とおでん登場回

ドンブラザーズのモチーフは童話の桃太郎だ。リーダーの桃井タロウ(ドンモモタロウ、以下、桃井)がお供となるメンバーたち(鬼、猿、犬、キジ)と悪に立ち向かう。

暴太郎戦隊ドンブラザーズ:ドンモモタロウ

敵は「ヒトツ鬼(ヒトツキ)」と呼ばれる怪物で、その正体は欲望に支配された人間だ。倒すことで元の姿に戻すことができるが、ヒトツ鬼を人間ごと消去しようとする「脳人(ノート)」という勢力が立ちはだかる。

暴太郎戦隊ドンブラザーズに登場する料理
おでんのほかにさまざまな料理が登場するのも楽しみのひとつ

三つ巴、四つ巴の複雑な構図に加え、謎だらけで見応え抜群だが、ギャグも多くてハチャメチャに展開するのがこの作品の最大の魅力だと思う。もちろん、戦闘シーンも盛り沢山で子どものハートもしっかり掴んでいる。2022年12月現在、テレビだけでなくAmazon Prime Videoでも動画配信を行っているので、記事とあわせて第1話からご視聴いただきたい。

おでんが登場するのは2022年12月13日時点で第3話、13話、27話、29話、32話、34話、37話、38話となっている。主におでんは主人公の桃井とライバルの脳人「ソノイ」が親交を深めるアイテムとして機能する。ここからは、登場するおでんを1話ずつ紹介していこう。

第3話:出汁香るタッパーのおでん

第3話「あかりどろぼう」のおでんはドンブラザーズのメンバー(お供)である猿原真一(サルブラザー、以下、猿原)の登場シーンで確認できる。

暴太郎戦隊ドンブラザーズ:第3話登場のおでんイメージ

猿原は俳句をたしなむ無職の風流人で、持ち前の知識と分析力で近隣住民の悩みを解決している。このシーンでは肌荒れの悩みを解決したお礼として、女性が風呂敷に包んだおでんを持って彼の自宅へやってくる。おでんが入ったタッパーの蓋を開けた瞬間、猿原は「きちんと昆布と鰹節で出汁をとっているな」という台詞を発する。

「肌荒れのお礼におでん」は少々唐突だし、上品な服装に身を包んだ女性の風呂敷からタッパーのおでんが出てくるなんて誰も想像しないだろう。このシーンに続く猿原の奇抜な言動もあいまって、おでんは視聴者の心に深く刻まれた。

実際のやりとりは映像作品を観ていただくとして、第3話のおでんのポイントは2つ。ひとつめは「タッパーの妥当性」、ふたつめは「おでん出汁の風流な楽しみ方」だ。

タッパーの妥当性

まず、タッパーの妥当性について考えよう。お礼としてタッパーに入れた手料理を贈るのは、相手との距離感にもよるので必ずしも失礼とはいえない。ふたりは気心の知れた間柄なのかもしれないし、独り身の猿原を慮ってわざわざ料理したのなら、彼女は慈愛に満ちた素敵な女性なのではないかと思う。

耐熱ガラス製のタッパー

タッパーは手軽に扱えるプラスチック製のものでかまわないが、そのまま食べてもおしゃれに見えるガラス製を選んでもいい。重くて割れやすいというデメリットがあるが、耐熱であれば電子レンジを使用できるし、色も匂いも移らないので相手が洗って返すときに気をつかわなくていい。蓋は劇中のように4点ロックの密封型を選ぶと汁がこぼれにくい。

まだそこまで親しくないのなら、贈答用のおでん種詰合せを渡すという方法もある(ただし、出汁の香りに言及できないが)。

食中毒の予防のため、おでんはタッパーなどに小分けして冷ましてから冷蔵保存する

一方、食中毒予防の観点でいえば、タッパーは適切な保存容器といえる。おでんは鍋のように大きな容器に入れたままだと熱を保持しやすく、菌が増殖する可能性が高い。タッパーのように浅めの容器に小分けすることで冷めやすくなり、すみやかに冷蔵庫に入れられる。詳細については「おでんの食中毒の予防方法」の記事を参考にしてもらいたい。

耐熱ガラス製のタッパー

彼女が食中毒まで視野に入れてタッパーを使っていたのなら、かなりのしっかり者だといえるだろう。ただし、おでんは冷えたままだと匂いを発しにくいので、調理してすぐに持ってきたか、温め直してから持ってきた可能性が高い。

おでん出汁の風流な楽しみ方

次に出汁について考えてみよう。猿原の台詞によると昆布と鰹節で出汁をとっているというが、この組み合わせはおでんでは一般的なもの(合わせ出汁)だ。出汁の種類や取り方にこだわって、風流人の猿原を唸らせるようなおでんを作ってみよう。

昆布と鰹節

出汁用の昆布は主に4種類、羅臼昆布、利尻昆布、真昆布、日高昆布がある。羅臼昆布は濃厚なうまみとしっかりとした香りを持ち、「昆布の王様」と称されることもある。昆布単体の出汁に用いられることが多いが、おでんの合わせ出汁にも使用される。

利尻昆布

利尻昆布は香りが高く、京都でよく用いられる。真昆布は甘くまろやかなコクがあり、大阪で人気がある。日高昆布は関東や東北で用いられ、火が通りやすいので出汁だけでなく食用にも使える。それぞれに等級や収穫時期、天然・養殖物など種類があるので、無限にこだわることができる。

鰹節(花かつお)

鰹節も作り方や産地、形状などさまざまで、好みを探していろいろ試すと面白い。まず、鰹節は作り方で2種類に分けられ、カビを付けた枯節、カビなしの荒節がある。枯節は上品でまろやか、うまみは強めで主に関東で好まれる。荒節は魚らしさや燻製の香りがあり、うまみは抑えめで関西でよく用いられる。

削り方もいくつか種類があるが、薄削り、厚削り、粉が出汁に用いられる。香りを立たせるなら薄削り、うまみを引き出すなら厚削りが向いている。なお、両方の特性を持つ中厚削りというものもある。

鰹節(花かつお)

香りが最も強いのは仕上げ節を調理する直前で削ったものだが、あらかじめ削った状態で販売されている削り節でもじゅうぶん香りよく仕上がる。

さまざまな出汁用の節

組み合わせは好みだが、おでんの場合はしっかりとうまみを感じるものが向いている。乾物専門店がおでん用にブレンドするのは、鰹だけでなくほかの魚を加えた混合節が多い。たとえば、濃厚な宗田鰹、甘みのあるサバ、魚らしいコクやうまみがあるウルメイワシなどを加えると、おでんの味付けに負けない出汁ができあがる。鰹だけで物足りなく思ったら、これらをプラスしてもいいだろう。

一例として基本的な合わせ出汁の取り方を紹介しておこう。こちらは一番出汁と二番出汁の中間となる「1.5番出汁」と呼ばれるものだ。水1Lとして、昆布(利尻昆布)5〜7g、鰹削り節(荒節の薄削り、花かつお)30gを用意する。

昆布を水につける

昆布はかたく絞った濡れ布巾で表面を拭き、30分から2時間ほど水につけておく。

昆布を火にかける

鍋に昆布と水を入れて弱火にかけ、鍋底に気泡が立ってきたら昆布を取り出す。

鰹節を煮出す

沸騰後、100mlほど差し水をして鰹節を加える。灰汁を取りつつ4分ほど煮出し、火を止めて2分程度そのままにしておく。

出汁を濾す

ボウルに笊(ざる)を置き、漉し布かキッチンペーパーを敷いてから出汁を濾していく。このとき、えぐみが出るので絞らないのがセオリーだが、おでんの場合はうまみのもとになるので菜箸などで絞る。

出汁の完成

これで出汁の完成となる。あとはみりんや醤油などの調味料を入れ、具材を加えて煮込んでいく。香りを際立たせるなら最後に追い鰹をするのもいい。その場合はお茶パックかキッチンペーパーで削り節を包み、火を止めてから鍋に2分ほど入れて取り出す。もしくは出汁粉を振りかけるだけでもいい。具材を加える順番は「東京おでんの調理方法」を参考にしてほしい。

久原本家 茅乃舎「おでんのだしとつゆ」

もっと手軽に出汁を取りたければ、パックのものを使用してもいいだろう。鍋に火をかけて数分間入れておくだけで、本格的な出汁が完成する。

出汁の取り方は人によって異なるので、上記はあくまでも参考程度にしてほしい。また、地方やお店によって昆布のみを使用したり、あご(トビウオ)やアサリ、鶏ガラなどを使うこともある。さまざまな出汁を試して「この出汁の香りの強さは利尻昆布で…」と猿原の口調を真似してみるのも面白いし、一句詠んでもいい。

第13話:おでんの約束を初夏にする

第13話「さよならタロウ」でのおでんは、ライバル同士である桃井とソノイが親交を深めるシーンで台詞のみの登場となる。

冷やしおでん(蒲重蒲鉾店)

敵同士であることを知らずに心を通わせるふたりだったが、それぞれのやるべきことを達成したら「なにか美味いものを食おう」と約束する。桃井はおでんを提案するが、人間ではない脳人のソノイにはおでんがどのような料理なのかわからなかった。

彼らのやるべきこととはお互いを倒すことなので約束は叶うことがない。すこし切ないシーンだが、放映日は5月29日。梅雨が近い初夏の真っ只中で、一般的に秋冬の料理とされるおでんを提案するのは少し違和感がある。しかも、桃井はダメ押しの「夏のおでんもいい」という台詞を発しており「どれだけおでんが好きなんだ」とツッコミを入れる視聴者も見受けられた。

増田屋蒲鉾店(庚申塚)のおでん種で作った冷やしおでん

しかし、同じおでん好きの筆者からいえば、桃井の言っていることは間違いではない。佃忠(田端)のおかみさんによると、冷房で冷えた身体を温めるために買いにくるお客さんも多いという。また、冷やしおでんにしても美味しく、栄養も豊富なので夏バテには最適だ。

桃井は料理の腕もプロ並みで神の舌を持つ食通でもある。夏におでんを試したことがなければ、既成概念にとらわれずに彼を信じて味わってほしい。なお、夏のおでんの楽しみ方は「鈴廣に学ぶ夏のおでんと蒲鉾の楽しみ方」や「佃忠(田端)のおでん種で冷やしおでんをつくる」という記事をご覧いただきたい。

第27話:おでんとドンペリのランチ

第27話「けっとうマジマジ」のおでんは桃井が宅配の仕事をしているシーンに登場する。桃井は配達先の房子という女性のアパートを離れる際、一緒にいたソノイに「彼女が食べていたのがおでんだ」と教えると、ソノイはおでんを確認するため房子の部屋へ戻る。

暴太郎戦隊ドンブラザーズ:第27話登場のおでんイメージ

このシーンで驚かされるのは、房子が昼食にドン・ペリニヨンを飲みながらおでんを楽しんでいたことだ。彼女は街のクレーマーという設定で、お世辞にもセレブには見えない。また、ドンペリ、おでん、昼食という組み合わせも突飛すぎる。ちなみに彼女の登場は2度目で、喫茶店でドンペリをオーダーする第13話とまったく同じくだりとなっている。

さて、おでんとシャンパン(シャンパーニュ)。意外な組み合わせのように思われるが、これが実によく合う。シャンパンは伝統的な瓶内二次発酵法の工程を経るため深いうまみを持っている。このうまみはおでんの出汁に含まれる昆布のうまみと相性がいいのだ。

シャルル・ド・フェール トラディション・ブリュット(白)
シャルル・ド・フェール トラディション・ブリュット(白)

シャンパン以外にも瓶内二次発酵法を用いたスパークリングワインは存在する。たとえばシャルル・ド・フェールの「トラディション ブリュット(白)」はすっきりとしていて繊細なおでんの味を邪魔せず、お互いのうまみが響き合う。さらに手頃な価格なのも嬉しいところだ。フランス以外では、スペインのカヴァ、南アフリカのグラハム・ベックが製造するスパークリングなども合うだろう。ワイン専門店で相談すれば、気軽におすすめを教えてくれる。

暴太郎戦隊ドンブラザーズ:第27話登場のおでんイメージ

休日のランチにおでんとスパークリングワインを優雅に楽しむことができれば、房子の類まれなるセンスに近づけるかもしれない。彼女はひとりだったが、友人を招いて一緒に味わってもいいだろう。

第29話:おでんデビューは糸こんにゃく

第29話「とむらいとムラサメ」では、桃井の手によって倒されたソノイの葬式のシーンでおでんが登場する。横たわるソノイを見つめながら、桃井は彼と交わしたおでんの約束に思いを馳せる。

暴太郎戦隊ドンブラザーズ:第29話登場のおでんイメージ

桃井の空想のなかで、ふたりは肩を並べておでんを食べている。ソノイが初めて味わうのは、なんと糸こんにゃくだ。たしかに人気のおでん種ではあるが、紀文の「よく入れる具(たね)ランキング」では過去10年で10位付近を上下している。トップ3常連の大根や玉子、ちくわではないことにツッコミを入れたくなるが(ちなみにこの3つは取り皿に入っている)、この後に続く桃井との「こんにゃく問答」のための演出としてなら理解できる。また、第37話で桃井が大根のほかに糸こんにゃくを頼んでいるので、自分の好物をソノイにすすめたとも解釈できる。

おでんの白滝(引き解け結び)

なお、関東では「糸こんにゃく」よりも「白滝」の呼び名のほうが一般的だ。はんぺんやちくわぶといった東京のおでん種が頻繁に登場するドンブラザーズにおいて、わざわざ糸こんにゃくと呼ぶのは疑問だが、これも先ほどの「こんにゃく問答」のための都合と考えれば問題ない。

おでんの白滝の結び方・巻き方:引き解け結びのステップ
引き解け結びのステップ(クリックして拡大する)

ソノイが食べていた糸こんにゃくはボリュームがあって美味しそうだが、あのサイズを再現するなら自分で巻くといいだろう。その際は1本が長くて結びやすい「手巻き白滝」と呼ばれる商品を使用するといい。結び方はおそらく引き解け結び(スリップノット)で、結び目のほかに輪ができるのでボリューム感を出すことができ、不器用な方でも簡単に結ぶことができる。詳しくは「おでんの白滝の結び方・巻き方」をご覧いただきたい。

第32話:ランチはチビ太のおでん

第32話「けっとうソノ2」のおでんが登場するくだりは第27話と同じだが、房子の代わりに男性が登場する。ドンペリはないが、代わりに漫画「おそ松くん」でお馴染みのチビ太のおでんを手にしている。

チビ太のおでん「走れ!おう松さん」バージョン(こんにゃく、大根、焼きちくわ)

こんにゃく、大根、焼ちくわの組み合わせだが、フジオ・プロによると公式の組み合わせはこんにゃく、がんもどき、なると巻となる。ただし、チビ太のおでんにはさまざまなバリエーションが存在し、第32話の組み合わせはアニメ「おそ松さん」とJRAがコラボした「走れ!おう松さん」のイベントで販売していたものと同じになっている。チビ太のおでんの詳細については「チビ太のおでんを考察する」にまとめているので、あわせてご一読いただきたい。

第34話:おでんのからしで正気に戻る

第34話「なつみミーツミー」におけるおでんのエピソードはハチャメチャな展開で、視聴者からの反響も非常に大きかった。

暴太郎戦隊ドンブラザーズ:第34話登場のおでんイメージ

死んだはずのソノイは復活すると、なぜか脳人の仲間を引き連れておでん屋台に出かける。そこで桃井やその仲間たちと鉢合わせになり、意図せずふたりのおでんの約束が果たされることになる。

暴太郎戦隊ドンブラザーズ:第34話登場のからしのイメージ

ソノイは復活後、桃井に倒される前とはまったく異なる人格となっていた。しかし、桃井にすすめられたからしをそのまま食べ、涙を流すことによって正気に戻る。この奇妙な展開を説明できる自信がないので、ぜひ本編をご覧いただきたい。

粉からし

ソノイを正気に戻すなら、ぜひ粉からしをおすすめしたい。チューブのからしよりも鼻に抜ける辛さが強く、香りもよいからだ。ぬるま湯で溶く手間があるが、量を調節すれば劇中のゆるいからしも再現できる。

粉からしをぬるま湯で少しずつ溶く

粉からしはチヨダやS&Bのものがあり、おでん種専門店や量販店で手に入る。必要量を器に移したら、ぬるま湯(40℃ほど)を少しずつ加えて練る。

練ったからしにラップをかけ10分ほど寝かす

ある程度まとまったらラップをして10分ほど置き、さらにぬるま湯を加えて好みの柔らかさに整える。とても美味しいからしができあがるが、くれぐれもからしだけを食べないようにしてほしい。詳細については「おでんのからしの美味しい食べ方」を参考にしていただきたい。

第37話:伝言ゲームですじ肉を奢る

第37話「イとニとザとシ」にもおでん屋台が登場する。すっかりおでんが気に入ったソノイは屋台の常連となり、ふたたび桃井たちと相席になる。

すじ肉(牛すじ)

どちらがおでん通かで張り合うふたりだったが、ソノイはなぜか伝言ゲームのように隣席の仲間に言葉を伝え、桃井と直接話そうとしない。ソノイは「おごるな(驕るな)」と伝えたが、桃井に届く頃には「おごろう(奢ろう)」となり、「そんな筋合いはない」は「今日はすじ肉がいい」に変わっていた。

東京都北区田端 田端銀座商店街:佃忠(田端)の牛すじ
おでん種専門店でも美味しい牛すじが手に入る(北区田端の佃忠にて)

巷では「おデンゴンゲーム」と呼ばれる微笑ましいシーンだが、良いすじ肉(牛すじ)が食べたければ、自分で作ってみるといいだろう。関西では牛すじを自宅で調理することが多いが、東京ではあまり馴染みがない。材料を手に入れにくい、調理時間が長い、臭いが気になるなどの懸念がいくつかあるが、実践してみると意外に簡単だということに気がつく。

牛すじ、生姜、長ネギ

デパートでは人形町今半などで取り扱っている場合がある。また、街の精肉店にもあるので、自宅近くのお店で探してみてもいいだろう。ショーケースに並べていない場合もあるので店員さんに聞いてみるといい。もちろん、ネット通販を利用するのもありだ。作り方の詳細は「おでんの牛すじの調理方法」を参考にしてほしい。

美味しい牛すじができあがったら、タッパーに詰めて風呂敷に包んで桃井とソノイにお裾分けすれば、ふたりの仲を取り持つことができるかもしれない。

第38話:最高の卵を求めて奔走する

第38話「ちんぷんかんクッキング」は料理対決の話がメインになるが、ソノイが本筋に関係なくおでん用の卵を求めて奔走する。

暴太郎戦隊ドンブラザーズ:第38話登場のおでんイメージ(玉子)

ドンブラザーズのメンバー(お供)である犬塚翼(イヌブラザー)とレストランのシェフがオムレツ料理対決を行うことになり、最高の卵を求めて養鶏農家を訪ねる。しかし、対決とは無関係のソノイが現れ、卵を手に入れたいと申し出る。彼はおでん屋台で美味しい玉子を食べるべく、農家にやってきていたのだ。

玉子

劇中に登場する卵の名前は「最高のたまご」。現実の世界では「高級卵」や「ブランド卵」と呼ばれる類のものだろう。なかには1個800円以上のものもあるが、味や質感、風味や栄養にいたるまで個性がある。また、飼育環境も養鶏農家によってこだわりが異なるので、価格だけで評価せずに自分の好みを探るといい。

高級卵はゆで卵でも違いが出るというが、やはり生で食べるのがもっともその魅力が伝わりやすい。おでんにするなら半熟にしてもいいだろう。なお、通常価格の卵でもじゅうぶん美味しい。

おでんの玉子

ゆで卵を作る方法は「おでんの玉子・半熟玉子の作り方」の記事を参考にしてほしい。なお、ソノイはおでん屋台の店主に卵を無事届けていたが、産みたてのものは炭酸ガスが抜け切っていないため殻が剥きづらいので、産卵日から1週間ほど置くといい。

おでん屋台を楽しむには

第29話や34話などに登場するおでん屋台は、リアカーでの屋外営業というステレオタイプなものとして描かれているが、現在ではそのような業態はほとんど存在しなくなった。

天つゆおでん屋台 華門:おでん

しかし、屋外でおでんを提供できなくなったわけではなく、キッチンカーや私有地内で営業する店舗は存在し続けている。

天つゆおでん屋台 華門

東京でいえば、日暮里駅近くにある銭湯「ひだまりの泉 萩の湯」(台東区根岸2-13-13)の敷地内で営業する「天つゆおでん屋台 華門」、八王子の西放射線ユーロード沿いで営業する「さんかく」(八王子市横山町12-1)がある。

露店のおでんのイメージ

神社の縁日などに出店する露店でもおでんを提供しているので、参拝がてら楽しむのもいいだろう。そのほか、屋内に屋台を設置するおでん料理店もあり、気分だけを味わうのなら選択肢に入れてもいいだろう。屋内店のほとんどで予約が可能なので、オフ会などに利用できる。

ドンブラザーズに登場するおでん種

最後に劇中に登場するおでん種を紹介しておこう。これらは量販店で手に入れられるものばかりだが、おでん種専門店で購入してもいいだろう。

日本橋 神茂の「手取り半ぺん」

まずははんぺんだが、劇中に登場しているのは大判の平たいもので簡単に手に入る。本格的なものを選ぶなら、職人による手づくりのものがいい。原料魚は古くからアオザメやヨシキリザメなどのサメ肉を使用するが、量販店で並ぶものはスケトウダラなどのすり身がブレンドされていることが多い。

日本橋 神茂の「手取り半ぺん」

職人が手づくりするものは、何軒かのおでん種専門店で販売しているが、江戸時代からはんぺんを専業とする神茂の「手取り半ぺん」をぜひ一度味わってほしい。アオザメとヨシキリザメを4:6の割合でブレンドし、魚肉の豊かなうまみと絹のように繊細な舌触りを堪能できる。ひとつひとつ職人が型取りし、中心がこんもりと盛り上がった形をしている。

四角い形状のさつま揚げ「角天」

第34話のさつま揚げは「角天」と呼ばれる四角いものを選ぶと再現できる。おでん種専門店では江戸川区の桧山水産、北千住のマルイシ増英、中板橋の太洋かまぼこ店などで購入できる。

イオン TOPVALU(トップバリュ)「角天」

スーパーなどの量販店でも手に入るが、東京では見つけにくい場合がある。TOPVALU(トップバリュ)の「角天」を販売するイオン系列店、もしくはネット通販では業務用のものが手に入りやすい。

丸石沼田商店の「無添加焼きちくわ」

ちくわは東北や青森のぼたん焼きを選ぶといい。肉厚でうまみがあり、おでんにふさわしい焼ちくわだ。劇中でもほとんどこのタイプを使用している。

丸石沼田商店の「無添加焼きちくわ」

有名なのが青森の丸石沼田商店イゲタ沼田焼竹輪工場のもので、おでん種専門店だけでなく量販店でも入手可能だ。劇中では斜め切りのものと丸太のように垂直に切った2つのバリエーションが存在する。

「ハダカ」のちくわぶ(川口屋)

ちくわぶは真空パックされていない「ハダカ」と呼ばれるものが下茹での必要なく、柔らかくておすすめだ。おでん種専門店や豆腐店、こんにゃく店で取り扱っている。パックのものは赤羽(志茂)の川口屋、千住大橋の山栄食品などがおすすめだ。

ちくわぶ

劇中のものを再現する場合は、垂直に切って丸太型にするといい。下ごしらえについては「おでんのちくわぶの調理方法」の記事を参考にしてもらいたい。

がんもどき(小)

がんもどきは小さく丸いタイプを選ぶと劇中のものを再現できる。神茂の「がんも」や三之助とうふ(もぎ豆腐店)の「京がんも」など、量販店でも比較的手に入りやすい。自作する場合は「おでんのがんもどき(飛龍頭)の調理方法」の記事を参考にしてほしい。

大根こんにゃく巾着の調理法については、それぞれのリンク先の記事を参考にしてもらいたい。ウインナー巻やごぼう巻、つみれなども登場するが、これらはおでん種専門店で手に入るので、お住まいのエリアのお店で手に入れてもらいたい。

以下は登場したおでん種を各話ごとにまとめたものなので、再現したい話数をチェックしていただきたい。あくまで視認による調査結果なので、不明瞭なものには「*」を付けている。

第3話「あかりどろぼう」

大根、こんにゃく、焼ちくわ、はんぺん、巾着(おそらく餅)、がんもどき、さつま揚げ(丸天もしくは野菜揚*)、ごぼう巻

第27話「けっとうマジマジ」

大根、玉子、焼ちくわ、はんぺん、糸こんにゃく、がんもどき、さつま揚げ(丸天)、ちくわぶ

第29話「とむらいとムラサメ」

大根、玉子、こんにゃく*、焼ちくわ、糸こんにゃく、さつま揚げ(角天)もしくは厚揚げ*

第32話「けっとうソノ2」

大根、こんにゃく、焼ちくわ

第34話「なつみミーツミー」

大根、こんにゃく、焼ちくわ、はんぺん、糸こんにゃく、巾着(おそらく餅)、結び昆布、さつま揚げ(角天)、ちくわぶ、つみれ、ごぼう巻、ウインナー巻、ゲソ巻、長ねぎ揚*

第37話「イとニとザとシ」

大根、玉子、こんにゃく、焼ちくわ、はんぺん、糸こんにゃく、巾着(おそらく餅)、結び昆布、さつま揚げ(角天、丸天、ほか*)、ちくわぶ、すじ肉(牛すじ)

第38話「ちんぷんかんクッキング」

大根、玉子、こんにゃく*、はんぺん、すじ肉(牛すじ)、ウインナー巻*

これでおでんとも縁ができた

SNSを覗くと「ドンブラザーズを観ておでんが食べたくなった」という感想が多く、実際に放映日におでんを味わう視聴者もかなりいるようだった。これは、明らかにドンブラザーズが視聴者とおでんとの「縁」を結んだものだといえる。

暴太郎戦隊ドンブラザーズのおでんを楽しむ

劇中のおでんはストーリー進行やプロダクション上の制約によりデフォルメせざるを得えず、「消えもの」を扱うフードコーディネーターの方の苦労は計り知れない。ご家庭で調理する際は桃井の100点満点がもらえるように、ぜひこだわってみてほしい。おでんを真剣に楽しむことで、登場人物たちの心情にシンクロすることができ、さらに深くドンブラザーズを楽しめるはずだ。

本編は残り1クールを切って佳境に入りつつあるが、おでんが登場するかは“月のみぞ知る”。今後もドンブラザーズとおでんとの関わりに目が離せない。

© テレビ朝日・東映AG・東映

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